いつもいがみ合ったり、反発し合ったり、意見の食い違いなんて当たり前。
それでもいつも、感じるもう一人の存在に安心感を覚える。

それはきっと、まるでヒトと影みたいに。
僕らが、裏表の、なくてはならない関係だから。




背中に感じる裏表の存在(キミ)




「あー、もう!!こんなことになったの、ダークのせいなんだからね!!!」
『うるせぇな、俺のせいじゃねぇ!!いいからお前は黙って戦え!!!』

一つの身体から、相反した意見の声が、二つ。
最もそのうち一つの声は、彼らの意識のなかでしか聞こえない。

いったいなぜ大助とダークが口論を繰り広げることとなったのかは、
数分前へとさかのぼる。

大助とダークは、いつも通り笑子に勝手に予告状を出され、
いつも通り夜の闇へと飛び出した。
大きな漆黒の翼をはためかせ、どこまでも無限に続く空を舞う。
相手にもならない警官達をまいて、まんまと侵入する。

今回のターゲットまでの道のりは、大助もダークも既にインプット済みだ。
全く迷うことなく通路を疾走と駆け、数々のトラップをなんなくかわす。
そして今回もあっけなく、ターゲットの展示されている部屋まで辿り着いた。

日渡のことだ。またどんな仕掛けをしているか分かった物ではない。
ダークは一応、壁の裏にその長身を上手く隠した。

『どう?ダーク。いけそう?』

大助が不安そうに尋ねるものだから、ダークは少し不機嫌になる。
今までダークはどんなトラップも、どんな困難も、全て乗り越えてきたのだ。
それでもまだ自分の実力を認めていないのかと思うと、無性に腹が立つ。

「お前、誰のこと心配してんだよ」
『だって、今日は嫌な予感がするから…』
「それはいつものことだろう?いいから黙って見てろ。
これくらいの仕事、すぐに終わらせてやる」

ニヤリと口の端を吊り上げ、ダークは息を潜めた。
静かに足を運びながら、慎重に中の様子を伺う。
展示室には、静けさしかない。

気配を消して、すばやく侵入し、そして手際よくターゲットを頂戴する。
この辺りは手馴れた物で、速いことこの上ない。

と、その時。
突然ものすごい速さで、数え切れないほどのミニスカートの婦人警官の山が、
ダークを目掛けて一斉に突進してきたのだ。
いつかを思い出すこの光景に、ダークと大助は本当に嫌な予感がした。

「日渡アイツ、おんなじ手使いやがって!!まさか俺への誕生日プレゼントか?」
『そんなことよりダーク、早く逃げて!!ていうか、僕の誕生日だから!!!』

大助の叫びと共に、ダークは駆け出した。
すると黄色い嬌声を上げながら、女警官たちは追いかけてくる。
ここまで同じ展開だと、呆れてしまいそうになる。

そして今日は大助とダークの誕生日。
思わぬプレゼントにダークはニヤニヤしているが、大助は真っ青だった。
とっとと終わらせて、帰ってケーキを食べようと思っていたというのに、この有様。
仕事ですら嫌だったのに、延長戦とはとことんついていない。

とにかく頭に入っている逃げ道のルートを辿り、走り続ける。
それでもまだしつこく追ってくるミニスカートの軍団は、既に己の使命を忘れていた。

「だーー!!キリがねぇ!!」

勢いよく角を曲がる。
そのまま一直線に進めば、出口だ。
外に出てしまえば飛べばいいのだから、こちらのもの。

が、しかし、事はそう上手くはいかないものだ。
いきなり人影がダークの真正面から突っ込んできた。
それはやはり婦人警官の一人で、ダークは咄嗟に受け止めた。

「おっ……!?」

そこまでは良かったのだが、女性ではありえない骨格に、異変を感じた。
けれどもう時は遅く、そのまま床に倒れこんだかと思うと、そのまままっ逆さま。
そう、本当に突然のことで。

二人はまっ逆さまだった。

「イッテテテテ……て、えぇ!?」

落ちた穴は案外深く、受身を上手く取らなければ危ない所だった。
そんなことを考えながら痛む身体をさすっていると、ふと重要なことに気づいたのだ。

よく考えると、自分は今ダークの中。
それなのに痛みを感じた。
慌てて身体を見回すと、それは本来の自分の身体だった。

「ダーク、いったい、どうなって…!?」
「驚いたか」

その時、頭上から聞き覚えのある声。
見上げたると、そこには先ほど体当たりしてきた女警官。

『大助、お前の嫌な予感、あたったぜ……』
「だからいったんだよ…」

その正体は、至極楽しそうな顔をした、日渡その人だった。
以前と全く同じ展開に、大助もダークもうんざりする。
そう、日渡は”また”女装していたのだ。

そして気がつけば、大助の周りには大量の警官たち。
ぐるりと四方八方に囲まれて、逃げ口がない。

「まさか同じ手を使うとは思わなかったようだな、ダーク。
そしてそれは全てを真実に変える力を持っている。だからお前は丹羽に戻ってしまった」
「あ…あの、日渡君…」
「解っている。丹羽の姿では捕まえないという約束だった。
だから、丹羽を傷つけはしない。ただ、諦めてそれを渡してくれればいい」

静かにそういう日渡に、大助は救いを感じた。
この状況で、おまけに今の姿ではどっちみち逃げるのは無理だ。
とりあえず渡してしまえば、身の安全は確保される。

「ねえ、ダーク、日渡君もああ言ってくれてるし、今回は…」
『何寝ぼけたこと言ってんだよ!!だめに決まってるだろ!!!
お前は俺の顔に泥を塗るつもりか!?』
ものすごい形相とものすごい声量で叫ばれ、大助は思わず耳を塞ぎそうになる。
もしここでこれを渡してしまえば助かるのかもしれないが、
後でダークに何をされるか、解ったものではないので正直怖い。

大助はおろおろしながらごくりと生唾を飲み、決心を仕方なく決める。
この際自棄だ。

「ごめん、日渡君。これ、渡せない」
「……丹羽」
『そうだ大助!!じゃ、手っ取り早くここから脱出するぞ!!!』

妙に楽しそうに言ったダークに、大助は驚く。
脱出すると言っても、自分のままでは何もできはしない。
第一、たとえダークであったとしてもここから逃げ出せるか危ういというのに、
ダークの様な力も、体格も、自信もない自分に何ができるというのだ。

「む、無理だよ!!僕じゃ…!」
『何弱音吐いてんだよ!!俺がサポートしてやるから、くよくよすんな!!』
「え…?」

大助は、ダークの言葉に目を見開いた。
今までダークは大助のことをからかったり、けなしたり。
馬鹿にされたことでさえあったのだ。
そのダークが、自分をサポートすると言ったのだ。

その真意が全く解らず、大助はただ呆然とする。
そんな情けない相棒に、ダークは渇を入れる。

『おいおい、今からそんなんでどうすんだよ!!
いいか、まず左の方に突っ走れ!警官は蹴散らせ!!』
「う、うん。解った!!」

ギリ、と手を握り締めると、それを合図に走り出す。
上方から様子を伺っていた日渡は、僅かながらに驚く。

「……今回は、仕方ないか」

言葉とは裏腹に、やはり楽しそうな笑みを浮かべ、日渡は呟いた。

『おい、大助!!右だ、右!!』
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!!」

的確な状況判断と敵の位置を、ダークは大助に伝える。
自分だけではカバーしきれない部分を、そのダークの声を頼りに進む。
突進してくる警官を上手くかわし、軽く急所を突く。
その繰り返しで、とにかく警官の山を一直線に突き進む。

大助は不思議な感覚に陥っていた。
あれほど自信のなかった自分が、今はとても落ち着いている。
ダークの支持のおかげか、なぜか不安要素は吹き飛んでいた。

そして、まるで今ダークと共に戦っているような。
まるで、すぐ後ろで自分と戦ってくれているような。
そんな気配を背中に感じていた。

絶大なる安心感と、自信に満ち溢れた今の大助に、敵う者はいなかった。




よくやく逃げ出し、また再び夜の闇へと紛れ込む。
大助は小脇に今回の獲物を抱え、軽く走っていた。

「やったね、ダーク!」
『当たり前だろ、この俺がサポートしてやったんだからな』

いつものように憎まれ口をたたくダークに、大助が頬を膨らませていると、
黙り込んでいたダークが、珍しく口ごもりながら言った。

『まぁ、でも今回は、お前のおかげで助かったぜ。
……その、悪かったな。お前の予感とやらを無視して』
「え!?ダーク、大丈夫!?熱でもあるんじゃないの!!?」
『何だとお前、俺がせっかく言ってやったってーのに!!!
取消だ!!今の取消!!前言撤回だ!!!』

あまりのありえなさに驚愕した大助は、風邪などひくはずのないダークに
訳のわからないことまで言ってしまうしまつだった。

けれど実際大助は、心の底から喜びを感じていた。
初めてダークに認められて、そして一人の力だけでなく、ダークと共に成功を収められたこと。
その全てがとにかく嬉しくて、大助はとびきりの笑顔だった。

確かに僕らは裏表なのかもしれない。
だけど、どっちが表だとか、裏だとかそういうことじゃなくて。
ただお互いが、お互いを必要として、そして信じあえる。
それさえわかっていれば、いいんだと思う。

大切なことは、きっと―――

大助は、いつかのダークに言った、あの言葉を思い出していた。



『共存』



その後夜中に家に帰り着いた大助を待っていたのは、笑子の強烈なアタック。
そして、梨紅からの誕生日プレゼントだった。
もちろん、ものすごいプレゼントが梨紗からダーク宛に、
梨紗の部屋のバルコニーに置かれていたことは、梨紗以外誰も知らない。



Happy birthday to Daisuke & Dark
−November 11−





何気にギャグ路線なのは私の趣味です。
そして、日渡総司令が女装しているのも、私の趣味です!(どーん)
皆様にも(日渡君の女装を)楽しんでいただけていたら幸いです。

written by Naao Ayami
(2004.11.11)

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