後ろから飛んでくる怒声を振りきって、白い廊下を全速力で駆ける。
息が上がって、頬が高揚して熱くて、感情も一緒にどんどん高ぶっていく。
とうとうじれったくなって、ジョミーはつい最近覚えたばかりのテレポートを実行した。
「ブルー!」
着地地点は、もちろん青の間でブルーが横たわっているベッドの上。
ブルーが身体を起こしていることは、既に思念で確認済みだ。
ブルーの身体を下敷きにないように上手く避けて、ジョミーはブルーに抱きついた。
首にきっちりと腕を回して肩に顔を埋めると、さらさらの柔らかい髪がジョミーの頬をくすぐった。
まるで空を飛んでいるときみたいな、澄んだいいにおいがする。
「ジョミー?」
「三日ぶり!ずっと会いたかっ…、あ…」
そこでようやくジョミーは、自分がとんでもなく恥ずかしいことをしてしまったことに気づいた。
たった三日話していなかったというだけで、寝顔は毎晩見に来ていたのだ。
しかも三日ぶりに目を覚ました体調の優れない人に、こんなことをするなんて。
(別に…ブルーの、その…、特別な人ってわけでも、ないのに)
「えっと、ごめん…。ひ、久しぶり…」
ほんの三日。だけどジョミーにとってはとても長いと感じられた時間だった。
ブルーが眠っている時間が長ければ長いほど、ジョミーの中に認めたくない未来が浮かぶ。
でも、だからってこんな考えなしの行動を、ブルーは子どもだと呆れてしまうのではないだろうか。
ジョミーがぎこちなく身体を離すと、ブルーが緋色の瞳でジョミーを見つめていた。
激しく脈を打つ心臓の音が耳元で大きく鳴って、ブルーに聞こえやしないかと更に距離を取って俯く。
するとブルーの長い腕がジョミーに向かって伸びてきて、耳元に触れた。
「僕も君と会えて嬉しいよ、ジョミー」
乱れていた髪がブルーの細い指によって梳かれて、かさりと小さな音を立てた。
そのままゆっくりと降りてきた指が、微かにジョミーの首元を撫ぜて離れていく。
視線を上げたその先で、ジョミーの見たかった大好きな笑顔が、花びらがほころぶように咲いた。
clap log (2008.02.19)