僕の手を握っていて

青い光がぼんやりと一点の空間を包むように照らしている。
できるだけ足音を立てないようにと、全神経を足先に集中させて歩く。
肩から流れるマントが歩く度に揺れる音さえ、大きく聞こえた。

「……ブルー」

返事はないと分かっていて、それでもいつも名前を呼ぶ。
ぴくりともしない姿を見る度に怖くなるから、必ず細くて長い手をそっと取る。
ブルーはここにいて、そして生きているのだと、微かな温もりが教える。

「今日は、今までで一番美味しいトマトが採れました」

ベッドの枕元に座り込んで、静かな声で語りかける。
ブルーが少しでも穏やかな眠りにつけるようにと、温かいサイオンで、優しく。

「若い世代はみんな、生き生きとしています。あなたにも伝わっていますか?」

ジョミーがシャングリラに来たばかりの頃とは違う、明るい思念が艦を漂っている。
先を憂いている長老たちでさえ、どこか晴れやかな思念を帯びている。
戦い、逃げ惑うことに疲れきっていたミュウ達の繊細な身体が、一時の休息を得たのだ。
でなければきっと、地球に辿り着く前に自分たちは力尽きていただろう。

地球へ行くことを忘れたわけじゃない。
だけどどこにあるとも知れぬ星を目指すなんて、途方もない旅路はいつも手探りだ。
どこを見渡しても真っ暗で、今までのようにジョミーの手を引いてくれるものはない。

「僕は、間違っていませんよね、ソルジャー・ブルー」

地図なんてない。誰かが導いてくれるわけでもない。
どこにも頼るもののない道を進むことは、とても怖くて今でも足が竦む。
こんな道を300年間独りで進んできたブルーは、いったいどれほど孤独だっただろう。
強く、そして迷いなくあらなければ、仲間を守ることはできないと知った。

「絶対みんなを…、あなたを、地球へ連れて行きます」

だから、それまでは僕を見守っていてください。
どんなに深い眠りの淵にいても、その手を離さないで、きっと。
たとえこの手を導いてくれるものはなくても、あなたの温もりさえあれば、僕は何も怖くないと思えるから。

「また、来ます」

ゆっくりとした動作で、眠るブルーの手を離す。
意志のない手は力なくシーツの波に埋もれて、そこに横たわった。